保護者の言葉に悩む保育者について ▶年中組担任・勤続3年目の保育者より

Q

勤めて3年目を迎えました。この園の一年の流れがわかり、保育にもやりがいを感じています。子どもたちに一生懸命関わっているつもりですが、あるお子さんのお母さまに「年少組の担任の先生はもっと子どもの面倒をよく見てくれた」「前の先生はまめに連絡をくれていたのに」と言われてショックを受けています。保育というよりも、保護者の方との関わりかたに悩んでいます。これから具体的にどうしていったらいいのでしょうか。

A

:石の上にも三年という言葉がありますが、3年間お勤めなさったということはよく頑張ってこられたなと思います。保護者の方から厳しい評価を受けてしまったことは、お母さんの我が子への深い愛情ゆえだとわかっていても辛かっただろうと思います。
:あるお母さまに「年少組の担任の先生はもっと子どもの面倒をよく見てくれた」「前の先生はまめに連絡をくれていたのに」と言われてしまったとのことですが。
:どのような人間関係でも言えることですが、比べられ評価されて否定されるということは、たまらない絶望感を感じるものです。精いっぱいやってきたことなら、なおさらです。そのことばかりが気になって、自信が持てなくなってしまうこともよくわかります。
こういったことは、まだ若くて未熟で一生懸命な先生の成長の芽を摘みとることになりかねませんが、このお母さまはそこまでは気が付かなかったのでしょう。
:とてもショックを受けたようです。
:同僚との比較についてですから、仲間の先生には相談しにくいでしょうし、園長先生にはさらに話しにくいことでしょう。ただ、園の先生でしたら多かれ少なかれこのような経験をしているものです。
たいていのお父さまお母さまは、その愛情ゆえに、我が子にとって良いことを貪欲に求めるものです。園の先生にその欲求を伝える人も伝えない人もいるのでしょうが、そうした強い愛情が子育てという大仕事の原動力となっているのです。ショックなお気持ちはよくわかりますが、そのように承知しておくことです。
:保育というよりも、保護者の方との関わりかたに悩んでいるとのことですが。
:悲しみに駆られて、子どものことがうわの空になってしまっては、本末転倒です。園の先生にとって、お子さんの保護者との関わりは、難しいこともあるかもしれません。
しかし、自分がどんなに子どもたちのために頑張っているか、わかって欲しいと思えば思うほどうまくいかなくなるものです。けれども、それが本物なら、いつか理解してもらえるときが来るはずです。
:どうしたらいいのでしょうか。
:お父さまお母さまにとっては、園の先生が、我が子を自分の子どものように愛して大切にしてくれることは、このうえない安心と信頼につながります。
ただ、園の先生が、どんなに子どもを思って一生懸命接しているとしても、お父さまお母さま以上にはできないものです。
それを承知したうえで、どこまで自分が子どもひとりひとりのことを知っているのか、愛しているのかを自分でチェックするのです。愛情は測ることはできませんが、理解の程度は、労力つまり関わり方で見ることができます。
:具体的にどうしたらいいのでしょうか。
:まず、紙を用意します。そこに、ご自分の受け持つクラスのお子さんの名前をひとりずつ書きます。名前の漢字、読み方を書いたら、次に好きな食べ物、好きな遊び、好きなキャラクター、住んでいる地区、長所や心配な事など、そのお子さんについて思いつくことすべてを書き出していくのです。
資料などは何も見ずに書いてみてください。そうすると、ご自分が子どもたちをどこまで知っているのか分かってくると思います。毎日の表情や持っているハンカチ、さりげなく口にした言葉やトイレの回数など、次々に思い出される子もいれば、あまり思いつかないお子さんもいるかもしれません。日頃、自分でそうと思っていなくても、関わりが少なければ書くことはできないのです。そういった、子どもについての理解の深さ浅さに、自分自身でも驚くことでしょう。そして、自分の関わりの不足を自覚して、すまないという気持ちも生まれてくるはずです。
泣きながらでも、このようなチェックすることを続けると、厳しい評価をされる保護者の方があなた自身を育ててくれる人にかわってくるはずです。
一歩一歩、そうして進んでみることです。きっといつか、本物の専門職者への道が見えてくると思います。頑張ってください。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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