自分のことを自分でしない子どもについて ▶4歳児担任・勤3年目保育士より

Q

年少組の担任をしているのですが、少し気にかかっている男の子がいます。そのお子さんは、発達に問題があるわけではないのですが、自分の身の回りのことができません。例えば、給食もひとりでは食べないので、私が口に入れてあげていますし、衣服の着脱も他の子どものように、声をかけるだけではできないので、一緒にやりながら練習している毎日です。
お子さんのお母さまには「園ではこのようにしています」とお伝えしているのですが、一人っ子のお子さんのためか、家では始めから全部、お母さまがしてあげているようです。園で少し練習して、ある程度できるようになっても、長期の休みの後には、また何もしなくなっています。もうすぐ、年中組みになるので、このままではいけないと思うのですが、どのように指導したらよいのでしょうか。

A

:家庭で大切にされ過ぎるあまり、自分では何もしなくても、別に困らないで育ったお子さんもたくさんいますね。
:園でも自分の身の回りのことをしないそうですが。
:大切な事は、先生として、園での対応にきちんとした方針を持つことです。
一人では食べないからといって、口にご飯を運び、自分ではしないからといって、イライラしながら衣服の着脱を手伝うようならば、それは子どもに巻き込まれているのであって、指導とは言えません。
『今日はここまで頑張ろう』というふうな、目標を子どもと共に持っているかどうかが問題となるでしょう。
叱ったり、せかしたりするのではなく、励ましながら『できることはできるまで待つ』、『食事を食べなかったら、他の子ども達と一緒に終わる』、『どうしたら良いのかを考えさせて、それでも上手にできない時にだけ手伝う』という方針を、貫けば良いでしょう。愛情のある厳しさが大切で、面倒に思ったり、批判的な気持ちで関わったりしていては、子どもを変えることはできないでしょう。
:お母さまには「園ではこのようにしています」と伝えているようですが。
:具体的にどのようなことを伝えているのでしょう。ただ単に「お子さんにご飯を食べさせました」「一緒に着替えをしました」と言うような報告なら、あまり変化は望めません。
『保護者への指導』という言葉がありますが、幼児教育の専門職者として『お家ではお子さんにどのように関わって欲しいか』ということを伝えなければ、ただよく面倒を見てくれる優しい先生だと受け止められるだけで、保育に対する責任を果たしたことにはなりません。
:園である程度、身の回りのことができるようになっても、長期の休みの後には、元に戻ってしまうようです。
:お家の方に
「ひとりで食事ができたり、衣服の着脱ができたりするというような、身辺自立は、お子さんにとってとても大切な課題なので、どうか休み中に少しでもできるように関わって頂けないでしょうか。そのことはお子さまの自信につながると思います」
というように、お伝えしておいたら、お家でも気をつけて下さり、変化が期待できると思います。
けれども、お若い先生で、保護者の方に上手に言えないようでしたら、主任や園長にお願いして言って頂く事もひとつの方法です。言い難いから言わないで我慢したりすることは、いつまでも悩みから解放されないでしょう。子どもの身辺自立の指導は、園全体の目標でもありますから、自分ひとりで抱え込まないほうがいいでしょう。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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