自分のやりたいことを通そうとする子どもについて ▶3歳男児のお母様より

Q

3歳になったばかりの息子は、とても元気なのですが、自分の意思が強すぎて困っています。例えば、「滑り台で遊びたい」となると、順番待ちもできないし、お昼の時間を過ぎてしまっても、「まだやる」と泣きわめくので、大変です。
なるべく、本人の気持ちを尊重して、思うままにさせているのですが、先日友人に「子どもの気持ちを受け止める事と、なんでも言いなりになる事とは違うんじゃない?」と言われてしまいました。
でも、息子のやりたいようにさせないと、泣いたり、私の顔を叩いたり、大騒ぎになります。また、周囲からのアドバイスの中には、子どもの気持ちを大切にとか、受容してとか言われる事もあるので、どうして良いのかわかりません。

A

:3歳のお子さんの自我の発達段階の典型的な姿ですね。  これはまだ、意思などというものではなく、よくいう『我を張り通そうとする姿』です。けれども、これはただの我がままと受け止めるよりも、子どもの成長段階にみられる、『自分で見つけたやりたいものに夢中になった姿』と捉える事が大切です。
: 順番も守れないし、時間を過ぎても「まだやる」というそうですが。
:与えられたおもちゃなど、大人主導の生活の中にいた子どもが、3歳くらいになって体も心も発達してくると、自分のやりたいことを発見できるようになり、それに夢中になるということはよくあります。周囲の状況に合わせて途中でやめることなどせず、自分が満足するまでしたいというのは自然の姿です。これが、自己中心的な幼い子の姿です。でも、それでは困るんだということを、子ども自身が学べるようにすることが大切です。
: お子さんを受容しようと努めていたお母さまですが、友人には「気持ちを受け止めることと、なんでも言いなりになるのは違うのでは」と言われたそうですが。
:ご友人は、『しつけ』ができていないと思っておっしゃったのでしょう。お母さまは、寛容で良いお母さんになろうとしていたのに、ご友人の言葉にひどく傷ついたでしょうね。
『しつけ』とは、子どもの社会化、つまり子どもが周囲の人々の中で、通用する生き方を身につけさせることです。子どもが望んだからといって、周りの人が、うるさがったり、嫌に思ったりすることをさせるわけにはいきません。やっていいことと、いけないことをわからせなければならないのです。それこそ、大人の責務であり、子どもが幸せな人生を歩むために不可欠なのです。
: どのようにしたらよいのでしょうか。
:まず、しつけの境界線を見極めることです。子どもの要求を受け入れながらも、人に迷惑をかけること、危ない事などをはっきりさせることです。これは、ほとんど皆が、眉をひそめることであるため、直感でわかるものです。
次に、それを、子どもにわからせることです。根気のいることですが、どうしてそれがいけないのか、3歳の子どもにわかるように、具体的に伝えることがポイントです。
お友達と遊ぶ際、横入りをしたら
「順番こだから、そんなことしたらダメよ。お母さんと一緒に待ってましょうね」
帰る時間になったら
「これはもうおしまいなの。また明日遊びましょうね」
「みんなが待っているから、帰りましょうね」
お友達のおもちゃを欲しがったら
「これは○○ちゃんのおもちゃよ。あなたは、今日は我慢しましょうね」
: それでも、ぐずったり、暴れたりする場合は、どうしたらよいでしょうか。
:その時には、大人の力を示します。
・同じことを、繰り返し言わずに、一言で結論を言って動じない
・有無を言わさず連れて帰る
・放っておく
・押し入れに入れる
いろいろな方法がありますが、ダメなものはダメであるという一貫性が、何より大切です。子どもの大騒ぎに屈することなく、腹をくくって、やっていくと、親としての自信にもつながります。子どももだんだん、これはダメだとわかるようになります。この時、お母さんの方が、自分の感情をコントロールできない事もあるでしょうが、それでも『子どもにとって、ダメな物はダメ』と言えるかどうかが、大切です。「あんな言い方してごめんなさい」と子どもに謝る事が、後にあったとしても、やって良い事と悪い事は、はっきりさせておくことです。
: 「子どもの気持ちを受容して」と言われたりすると、どうしていいのかわからないということですが。
:受容という言葉は、とても魅力的で大切ですが、何が目的で、何を受容しているのか、わからずにいると、混乱するばかりです。どこまでが限界なのかを見極めて、お子さんが、皆に受け入れられるよう導く事をしなければなりません。受容するものと、してはいけないものの区別ができると、子どものしつけもとても楽になります。本気の親の対応は、子どもの心に本物の信頼と、愛情を根付かせることができるものなのです。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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