家庭の雰囲気を壊す子どもの正直な言葉について ▶4歳女児のお母様より

Q

我が家は、主人の両親と同居している5人家族です。家族の中に、4歳の娘がいることで家庭が明るくなったり、人間関係でも助けられることが多くあります。
反面、思ったことをすぐ口にしてしまう娘の言葉で、家庭内が気まずい雰囲気になることがあります。例えば、おばあちゃまが作って下さった食事を頂いている時に「お母さんが作ったらもっとおいしいよね」とか「これちょっとしょっぱすぎるよね」などと言う事があり、おばあちゃまの気持ちを思うと、なんと返答したら良いのか困ってしまいます。
娘に悪気はないと思うのですが、こんな時にはどのように対応したらよいでしょうか。

A

:家族内の人間関係を良好に保つために、努力なさっているお母さまですね。子どもが、周囲のいろいろなことがわかるようになり、自分なりの発言をする頃になると、このようなお話をよく聞きます。 お子さんが思ったことを何でも言えるということは、そのご家族がお子さんを中心に、一生懸命に人間関係を作っている証拠だと思います。そういう意味では、明るいご家庭なのでしょう。
: 子どもの言葉で、周囲が気まずくなるような事があるのですが。
:子どもが、おばあちゃまを否定するような事を言うと、お母さまとしては心苦しいし、またお母さま自身が、おばあちゃまを否定していると思われるのではないかと、心配してしまいますよね。
: そんな時はどのようにしたらよいでしょうか。
:そんな時には、お子さんを叱るのではなく
「あら、そんなこと言われたら恥ずかしいわ。おばあちゃまの、あのお料理も、このお料理もお母さんには作れないもの」
「それに、ありがとうを言う前にそんなことを言うのは失礼よ」
と、お子さんの心ない言葉にきちんと対応して、お母さまが申し訳ないと思っている事が家族に伝わると、雰囲気もおさまって来るでしょう。
お母さまがおっしゃるように、子どもに悪気があるわけでわけではないことは確かですが、『子どもは正直だ』という言葉だけで片付けてしまうのは問題です。言葉のしつけとして、4歳ぐらいになった子どもに伝えておかなければならない事があります。
: どんなことでしょうか?
:まず、食事の時には、『いただきます・ごちそうさま』をきちんと言うこと。これは、どんなところでも言う言葉です。食べる事のできる事への感謝と共に、作って下さった人の事を思って言う言葉だからです。
お家では、それに加えて、おいしかったら『おいしい』と喜びを表し、口に合わなかったら、食べないで「ごめんなさい」と言って、残させてもらうように話しておかれるとよいでしょう。周りの大人が、作った人の労力も考えず『まずい』などと平気で言うような家庭では、このしつけは難しいでしょう。お子さんだけを見ず、周囲の大人の在り方を考えるきっかけになさると、良いと思います。
次に、お母さまを困らせているのは、味の評価よりも、おばあちゃまと比べられてしまったことでしょう。家族が仲良く暮らすためには、決して誰とも比べ合わない事です。みんなそれぞれ、長所も短所もあって「誰が誰よりもどうだ」などと言い切れることは何もありません。それぞれの良さや、欠点を認め合い、助け合いながら、お互いの役割を果たしていく時、平和な家庭を築く事が出来ます。
このお子さんの言葉は、正直と言うよりも、その基本が十分でなかったために出てきたもののようです。対象療法と原因療法という言葉がありますが、おばあちゃまの心を思うやさしいお母さまですから「比べられて褒められても嬉しくない」「おばあちゃまの悲しい気持ちを思う時、こちらの方がずっと耐えられない思いになる」というお気持ちを、そのままお話しになればよいでしょう。それをきっかけにして、お子さんは、自分の言葉に気付いて、話し方に気をつけていくようになると思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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