年中組の息子は最近、自分のしたことを「していない」と言ったり、していないことを「した」と言ったりします。ご近所の方から頂いた、とても上手に作られた折り紙を手にして、「これ、僕が作ったんだ」と自慢気に言ったり、パンツを汚してしまったときも、「僕、汚してない。僕じゃない」と言ったり、明らかに嘘だとわかることを言います。どう接していけばよいのでしょうか。
M:たいへん正直で真面目ないいお母さまですね。お子さんは年中組ですから、何がよいことで、何が悪いことなのか、あるいは、自分はどういうふうにしたいのか、わかり始めた時期なのでしょう。子どもが事実と異なることを言ったとしても、それは大人になってからの嘘とは違うのです。例えば、折り紙を見て「これは上手だなぁ」ということがわかり、「こういう風に折りたいなぁ」「お母さんに褒められたいなぁ」といった願望もあって、「僕が作った」と言ったのでしょう。また、「下着を汚してはいけない」ことがわかり、「お母さんに叱られたくない」と思うから、「僕、汚してない」と言ったのでしょう。こうした心の深い部分をきちんととらえて、まずその子が望んでいることを受け止めることが大切ですね。
T:このような場面では、どのようにお子さんに言葉をかけたらよいのでしょう。
M:「これ、僕が作ったんだ」と言ったら、「本当に?」「嘘でしょ?」と言うかわりに、「こんなに上手に折ってみたいって思ったの?」と言ってみてはいかがでしょう。下着を汚してしまったときも、「大丈夫よ、汚しても。すぐ綺麗になるもの」と言ってあげたらよいでしょう。そう言うだけで、「嘘でしょ」と言わなくても、お母さまが嘘だと気付いていることがお子さんには伝わります。こうして、「大人は決して簡単に騙せるものではない。嘘なんて通用しない」ということを子どもが気づくことはとても大事です。
T:嘘ではないか追及したり、嘘をついたことを責めたりする必要はないのですね。
M:全く責める必要はないとは言いませんが、その前にお子さんの思いを受容することが大切ですね。そのうえで、「そんなこと言ったら恥ずかしいわ」「~ちゃんが嘘つきだって言われてしまうと、お母さん悲しいわ」「どんなにおりこうさんでも、心がきれいになれないとだめよね」といった言葉で、いいかげんなことを言うのはだめなんだということを気づかせてあげるといいですね。
T:日頃のかかわりにおいて気をつけたほうがよいことはありますか。
M:「なぜ嘘をつかなければいられなかったのか」ということを考えると、自然と自分にも反省すべき点があることに気づけます。例えば、折り紙も、上手じゃなくても一生懸命作ったことを日頃から褒めてあげていただろうか、下着のことにしても、「汚いわねぇ。お母さん忙しいのに、またこんなことして」といつも叱っていなかっただろうかといった具合にですね。そんなふうに、なぜわが子は事実と異なることを言ったのか、お母さまがそこに目を向けて、日頃のかかわりを少しずつかえていかれれば、きっとお子さんのそうした現象も減っていくのではないでしょうか。