文字を早く読ませたいお母様について ▶6歳男児のお母様より

Q

年長組に通う息子は、誕生日を迎え6歳になりました。文字に興味はあるようですが、読もうとすると半分くらいしか読めません。周囲のお友達がスラスラと読めるような絵本も「どうせ僕は読めないから」と言って諦めてしまいます。
私が息子に、読み方を教えようと、一緒に絵本を読んだりするのですが、息子は「わからない」「もうおしまい!」と言って途中でやめてしまいます。
でも日常生活の中で、自分が読める文字をみつけると嬉しいようで「あっ!『あ』って書いてあるね」と言います。
せめて小学校入学までには、きちんと文字を読めるようになって欲しいのですが、どうしたらいいのでしょうか。やはり、私が焦り過ぎてはダメですよね。

A

:かわいいお子さんが小学校へ入学するとなると、やはりお母さまもいろいろとご心配なさるのでしょう。けれども、今回のご相談は全く問題はありません。
:お友達がスラスラ読める文字を、半分くらいしか読めないとのことですが。
:文字が、知的発達のバロメーターだと信じて、子どもに早くから読ませたり、書かせたりするお母さまはたくさんいらっしゃいます。ですから、年中組さんにも、文字をスラスラと読めるお子さんがいることはよくあります。
しかし、文字は言葉を表したものですから、ただ単に読めただけ・書けただけでは、それほど意味はありません。具体的な言葉にして実感し、理解して使いこなせなければ、本当に習得したとは言えません。
:お子さんは「どうせ僕は読めないから…」などと言うようです。
:それは、興味がないのに読ませようとしたり、お友達と比較したりと、周囲の大人がお子さんに働きかけた結果でしょう。お子さんに、そう言わせてしまったことは決して、良いことではありませんが、見方を変えれば、こんなにしっかりとした反抗を言葉で伝えられるのですから、言葉の本物の発達がなされていることを証明しています。
:自分が読める文字をみつけると嬉しいようで「『あ』って書いてあるね」と嬉しそうに言うそうです。
:これこそ、典型的な言葉の習得の姿ですね。子どもは、そうしたことを繰り返しながら、ひとつひとつ確実に言葉と文字の関係を理解していくのです。
心の発達が進むと、文字を読む準備が完了しますから、遊びと生活の充実こそが、この時期最も大切です。
例えば、『おはよう』『おかえりなさい』『これはたまごです』『かわいい○○ちゃん』など、日常生活の中で、使う言葉を文字にしてカードを作っておくとよいでしょう。それを楽しみながら読み合うことです。気が付くと、50音のほとんどが、言葉として読めるようになっているものです。
:「やはり、私が焦り過ぎてはダメですよね」とお母さまはおっしゃっていますが。
:おっしゃるとおりです。興味や体験から得た言葉や文字を豊かにしたほうが、就学後の国語力が高まるデータも出ています。お母さまは、ゆったりとした気持ちで、お子さんに関わって差し上げて下さい。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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