発言のコントロールができない子どもについて ▶6歳男児のお母様より

Q

息子はもうすぐ小学校に入学することを、楽しみにしているようですが、私はとても不安を感じています。
息子は、自分の意見をはっきりと言います。それは良いことなのでしょうが、どんな状況でも、一旦話をしたいとか質問したいと思ってしまうと、我慢できずに実行してしまうようです。例えば、先生が話をしている時に、全く違うことを質問したり、みんなで歌を歌っている時に、急に関係のない話を始めたりするのです。他のお子さんには、そういうことがないので気になっています。息子にどのように対応したらいいのでしょうか。

A

:6歳といいますと、考える力や表現する力がついてきますし、自己主張や自分の存在感を持つことへの欲求が強まることが考えられます。ご相談のお子さんは、知的な発達がとても盛んなのでしょうね。多少バランスを欠いていますが、頼もしいことだと思います。
:どんな状況でも、我慢できずに話し始めてしまうようです。
:お母さまがご心配なさることは、とてもよく分かるのですが、『急がば回れ』という言葉もあります。お子さんが、話し方のマナーを学ぶため、言葉の指導をする大人が、心得ておかなければならないことを考えることから始めるとよいと思います。
:それはどんなことでしょうか。
:幼児の言葉は、話すこと、聞くこと、想像すること、生活に適応することの4つです。そのしつけについては、基本的には、ふたつのことが重要です。
まず、ひとつめは『大人が良い聞き手になること』です。いつでもきちんと話を聞いてもらった子どもは、落ち着いて話すことができて、必要以上に大きな声を出したり、相手が話している最中に話したりすることが、あまりありません。それと同時に、人の話を聞く力も、備わってきます。どんな状況でも話し出してしまうということは、お子さんが、今話さなければ、自分の話を受け止めてもらえないかもしれないと考えている可能性もあります。ですからお子さんに、そんなことはないとわからせてあげることが、とても大事です。
「人がお話ししている時に、喋っちゃだめよ!」と叱るよりも
「待っててね、あとでちゃんと、○○君のお話を聞きますからね」
と、言うことの方が効果的です。必ず真剣に話を聞いてもらえるということがわかれば、きちんと待っていられると思います。
次に『子どもの言葉のモデルになること』です。子どもの言葉は、全て周囲の大人から学びとっています。自分達が、学ばれている存在であるということを認識していることは、何より重要な事です。
:園の先生が話をしている時に、全く違うことを質問するということですが。
:大人は、子どもがお行儀よく自分の話を聞くものだと考えがちですが、子ども達がすべてそうだとは限らないものです。興味や関心を持てなかったり、話をわかっていなかったり、他のことを考えていたりする子もいるのだと知っていることは、大切な事だと思います。
ご相談のお子さんは、小学校に上がる前の、精神的高揚もあって、たくさんのことで頭の中がいっぱいであるということを受け止めて、叱るというよりも
「○○君、今はおしゃべりしてもいいのかな?」
「あとで、お話を聞くからね」というような語りかけで、聞いてもらうことの安心感を持たせると同時に、適切な時に話すことの大切さを、お子さんに気付かせることです。
:他のお子さんには、そういうことがないので気になっています、とのことですが。
:とても積極的で明るくてこだわりのないお子さんですね。いつもいろいろな事を思い付き、話の全体の内容よりも、ひとつの言葉からパッとイメージが湧くお子さんなのでしょう。それは、大変素晴らしい能力でもあります。
:お母さまは、お子さんにどのように対応したらいいのでしょうか。
:あまり難しく考えずに、その場その場を活用して、徐々に分からせてあげることです。
歌をうたっているときに、話し始めたら
「あら、とってもステキな事を思いついたのね。じゃあそれは、あとで聞きますからね」
と決して傷つけずに言って聞かせて、後で必ず聞いてあげる事。
話をきちんと聞いたら、
「お話の中身はとてもよくわかったわ。でも、いつお話したら良いか考えることができたら、もっと素敵よ」
と、気付かせてあげることです。
こういった事を繰り返すうちに、聞いた人の心と話す人の心の、双方を見ることのできる力が育ち、発言のコントロールができるようになるでしょう。
6歳ですから、まだ大人ほどの言語能力はないので、焦らずに気付かせていってあげると、思考力と共に、話し方のマナーも育っていくでしょう。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
Copyright(c) Yamanashi Gakuin University. All rights reserved.