注意されると耳をふさぐ子どもについて ▶5歳女児のお母様より

Q

一人っ子の娘は、いつもワガママし放題です。
先日おじいちゃんが、テレビを近くで観ていることを注意したところ、娘は耳をふさぎました。私は、注意されて耳をふさぐという行為が許せず、厳しく叱りましたが、その時もまた耳をふさごうとしました。
私が気にし過ぎなのかもしれませんが、娘は素直さに欠けているように思います。私が娘を叱ろうとして呼んでも、来ない時がありますし、注意しても「だって」とか「~だから」と言い訳します。もう少し素直になって欲しいのですが、どのように接していったらいいのでしょうか。

A

:一人っ子で、穏やかな生活の中で育っていらしたお子さんなのですね。
耳をふさぐという行為に驚いて、反抗的な態度だと心を痛められたお母さまのお気持ちはわからないでもありませんが、非常に正常な発達の姿と言えるでしょう。
このご相談は、お子さんが何を望んでいるかに対応する、大人の叱り方の問題として考えたいですね。
:一人っ子で、いつもワガママし放題、とのことですが。
:わがままの内容は、詳しくわかりませんが、5歳のお子さんですから、お母さまが身に着けてほしいことを上手に教えられれば、それほど問題は大きくならないと思います。
乱暴な言葉を使うとか、ケンカや物の取り合いといったことは、一人っ子のお子さんにはあまりないはずですから。
:テレビを近くで観ていることを注意したら、耳をふさいだようです。
:おそらく厳しい叱り方だったのではないでしょうか。
「目が悪くなるからもう少し離れてみたほうが良いよ」
「おじいちゃんがテレビを観られないからちょっと場所を変えて」
というような穏やかな言い方だったら、あるいは耳をふさいだりしなかったかもしれません。
:お母さまは、耳をふさぐという行為が許せず、お子さんを厳しく叱ったそうです。
:大人は、子どもをしつけなければいけないと考えて、命令したり一方的に叱ったりすることも当たり前のことだと思いがちです。けれども、どんなに幼い子どもでも『子どもを人として尊ぶ』ということは、忘れてならないと思います。
:娘は素直さに欠けているように思う、とのことですが。
:大人の言うことを何でも聞く子どもを、素直な子だと思うと、間違えることになります。おじいちゃまやお母さまの注意を無視しないで、耳をふさいだということは、お子さんなりの意思表示だと思います。頑固でもなければへそ曲がりでもないでしょう。むしろ、知的に発達している証拠です。
:お母さまが注意すると「だって」とか「~だから」と言い訳するそうです。
:「だって」とか「~だから」という言い方は、子どもなりに原因や結果を考えて、問題点をつかんだ証拠です。たいへん知的な発達の姿です。
たとえ稚拙な言い訳であっても、それをきちんと聞いて、落ち着いて対応してあげることが大切です。自分の主張を聞いてもらえると分かれば、子どもは思いがけないほど素直になるものです。
叱ったり禁止したり、正しいことを押し付けたりすると、子どもは大人に対抗できなくなりますから、あまり望ましくないかたちで反抗してきます。たとえば耳をふさぐようなことです。こうした関わりが悪循環になって、子どもだけが素直でないと性格だと言われてしまいがちです。
親が話を聞かなければ、子どもも話を聞きません。知的なお子さんの話に耳を傾けてみると、お子さんにとってもお母さまにとっても、きっと良い結果が訪れると思います。叱る前に、なぜ耳をふさいだのか考えてあげて下さい。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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