怖い話を聞きたがるのに怖がる子どもについて ▶7歳男児のお母様より

Q

小学校に入学した息子は、高学年のお兄さんやお姉さんと触れ合う機会が増え、毎日がとても刺激的な様子です。それは私も嬉しく思っているのですが、よく怖い話を聞き、ひどく怖がっていることが気になっています。そのせいで、私がすぐそばにいるのに、となりの部屋へ着替えを取りに行けなかったり、ひとりでトイレに行けず、学校でおしっこを失敗したりすることもありました。
「それは作り話だから大丈夫よ」と言っても、やはり怖いようです。ならば、怖い話なんて聞かなければいいのにと思うのですが、本人はむしろ、怖い話を聞きたがります。どんなふうに対応していったらいいのでしょうか。

A

:幼い子どもは、知らない事が多いためにたいていは怖がりですが、小学校に入学する頃になると、そんな乳幼児期の怖がり感とは違う、『新しい怖がり感』が生まれてくるようです。
: それはどういうことでしょうか。
:感受性が強く想像力のあるお子さんに多いのですが、あらゆるところに怖いものがあると思いこんで、恐怖感を募らせるのです。おばけが出てきてトイレに引きずり込まれるだとか、夜になると柏の木の精が人をおどかすだとか、二階には『二階坊主』が住んでいて下の階に下ろしてくれないだとか、リアルに想像して本気で怖がるのです。この様な恐怖は、ある程度成長していろいろな物を知り、想像力も豊かにならないと生じないものですから、『新しい怖がり感』といいます。
: 高学年のお兄さんお姉さんから、怖い話を聞いてきてしまうようですが。
:よくある事ですよね。子どもの心を惹きつける興味関心の対象には、愉快なものや美しいもの、不思議なもの、強いもの、悲しいもの、ナンセンスなものや、スリルに満ちたものなど、いろいろありますが、中でもスリルに満ちたものや超人的なものへの関心は、強いものです。ですから『怖いけどもっと知りたい』『本当のことを知りたい』と強く惹き付けられているのでしょう。
『怖いならば聞かなければいいのに』と考える大人には矛盾している行為のように見えても、怖がりと知りたがりは、一緒に大暴れして、子どもの心を騒がせるのだと思います。
: トイレを失敗してしまうこともあるようですが。
:本人が本気で怖がっているのですから、そういうこともあるでしょう。理屈の問題ではないので、すぐには克服できないものです。意気地がないなどと叱っても仕方がないでしょう。ただ、少し時間はかかるかもしれませんが、きっと解決していくと思いますよ。
: 作り話だから大丈夫よ、と声をかけても怖いようですが。
:もちろん、作り話なのでしょうが、真実と作り話の区別ができるほど、まだ発達していないはずです。
: どんなふうに対応していったらいいのでしょうか。
:お子さんの怖がりを受容して
「どんなお話しなの?お母さんにも教えて」
「うわ~、それは怖いわね」
と共感しつつ、正体を確かめていくことが大切です。
「なんだ~、おばけかと思ったらカーテンだったのね」
「怖いなぁと思っていたけど、よく見たら木の葉っぱだったのね」
というふうに、ひとつずつ謎を明らかにしていくことが、とても大事です。
意気地無しだとか、弱虫だとか言わずに、
「怖いけれど、よく見てみたら、案外こんなものだったわね、よかったわね」
と声をかけることで、子ども自身がひとつずつ確かめながら、怖さを克服していくでしょう。
 何よりもお母さまが、その怖がりを個性として受け止めて、徹底的に理解を示し、じっくり関わってあげることが大切です。もしお子さんが、怖がりをからかわれるようなことがあっても、
「○○ちゃんは、賢くて想像力が豊かなのよね。」と、誰に対しても一貫して守ってあげることです。そのことが、怖がりを克服していくと同時に、お子さんの情緒を安定させるでしょう。こうした関わりは、成長した後にも、大変望ましいお母さんとの人間関係を築くことにつながると思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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