人の物を黙って持ってきてしまった子どもについて ▶5歳女児のお母様より

Q

もうすぐ年長組になる娘は、私の姉の娘ととても仲が良く、家に遊びに行くこともしばしばです。先日、姉の家から帰宅した際、娘がまっすぐこたつへ向かい、なにやらごそごそとしていたので、見ると、姪のマスコット人形を、隠し持っていました。黙って持って帰ってきたようです。私は、とてもショックを受けて、娘を叱り飛ばしました。それがいけない事だと分かってはいたものの、人形が欲しいという気持ちが強く、持ってきてしまったようです。
すぐにふたりで謝りに行きましたが、今後もこういったことが癖にならないか、とても心配です。

A

:よほどそのお人形が欲しかったのでしょうね。お母さまのご心配もよく分かりますが、この年齢の子どもの、いじらしい程の欲求ですから、それを分かったうえで、どうしたらよいのか話をすれば、きっと問題は解決すると思います。
: いとこ同士で、お家にもよく遊びに行くようです。
:いとことの交流があるなんて、今の時代、幸せなことですね。社会性の育ちに大変プラスになりますから。
: いとこのマスコット人形を持って帰ってきてしまったようです。
:欲しいと思ったのでしょう。よくあることです。持って来てはいけないということは分かって隠していても、そんなことはすぐにお母さんに見つかってしまうということまでは、考えつかなかったのでしょう。そこが幼さというものですね。
: お母さまは大変ショックを受けたようです。
:我が子が、
 ・悪いことと知っていてやった事
 ・それを隠した事
 ・仲良しのいとこの信頼を失う行為である事
 ・自分の子がこんなことをする子だと思われるのではないかと、
姉に対し恥ずかしく思った事
など、いろいろなことを考えて、ショックを受けたのでしょう。けれども大丈夫です。
「あら、○○ちゃん、そのマスコット欲しかったの?お母さんちっとも気がつかなくてごめんね」
「いとこの☆☆ちゃんは、なくしてしまったと思って、そのお人形を探しているでしょうから、今から返しに行こうね」
「あなたが、悪いことをしてしまったと思っていることは、お母さんはちゃんとわかっているわ」
と、お母さまは、さらりと言ってしまえばいいのです。そんなふうに、自分のした行為に恐怖を感じている子どもを安心させたそのうえで、これからどうしたら良いのか、毅然と対応することです。
「返しに行こうか?」などとお子さんに聞かずに、迷わずにまっすぐ返しにいくことが、ポイントになります。
: ふたりで謝りに行ったそうです。
:素晴らしいお母さまだと思います。子どもの善悪の判断を、きちんと伝えたことになりますから。
: 今後もこういったことが、癖にならないかご心配のようですが。
:きっと大丈夫でしょう。
お母さまに、お子さんの欲求を受容するお気持ちがありますから。今回のことで、お子さんは欲しいものをお母さまに伝えることができるということを知って安心したでしょう。このことは思いがけない程、親子の間で理解し合えていないことです。ひと山越えたという感があります。お姉さまや、いとこのお嬢さんとの人間関係も、このことをきっかけにきっと深まっていくと思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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