3人では上手に遊べない子どもについて ▶5歳女児のお母様より

Q

年長組に通う娘は、友達と仲良くしているようですが、園では色々とトラブルもあるようです。
娘は、園から帰宅すると「今日は☆☆ちゃんが、遊びに入れてくれなかった」「私は○○ちゃんと2人で遊びたかった」「3人で遊ぶのはイヤ」「△△ちゃんが入ってくると、3人になっちゃうから仲間に入れてあげたくない」など、私に話します。『お友達を仲間に入れたくない』というのは、娘の正直な気持ちなのでしょうが、何だか寂しく感じてしまい、「どうしてそんなことを言うの!?」と叱ってしまいました。女の子なら、こういったことは、大きくなってもよくあることなのでしょうが、今後どのように娘に接していったらいいのか悩んでいます。

A

:素朴で自然な成長をしっかり遂げているお子さんのようですね。また、真面目なお母さまで、お子さんとの関係もとてもよく築けているように思います。
:お子さんは、園では、いろいろとトラブルや葛藤があるようですが。
:子どもの人間関係は、トラブルとその克服の繰り返しから育っていくものです。今の葛藤も、成長の過程と思えば何ということもないと思います。
:「今日は☆☆ちゃんが、遊びに入れてくれなかった」「○○ちゃんと2人で遊びたかった」「3人で遊ぶのはイヤ」というような話があるようですが。
:2人でしっかり向き合って、お互いの心を通い合わせる遊びと、3人・4人といった集団の遊びとは少し性質を異にしているものです。ふたりで遊びを深めている時は、他の人が邪魔になる事は自然な事です。また、3、4人の集団でなければ遊びが成立しないこともあります。このような遊び方を、子ども達は繰り返しています。だから、お友達との関わりが、都合の悪い場合も生じます。そんな時に「意地悪」だとか「嫌い」とか「好き」とか言う言葉が出てきます。これこそ、子どもらしい葛藤の姿です。それを乗り越えて、人との関わりを発達させていきます。お母さまがそのことを分かって、お子さんの気持ちを受け入れてあげれば、きっとお子さんも心がおさまると思います。
: お母さまは、正直な気持ちとわかっていても、お子さんの発言を寂しく感じて叱ってしまったようです。
:優しい心を持った良い子に育てたいと思っていらっしゃる、一生懸命なお母さまなのでしょうね。お子さんが、こんな正直な気持ちをお母さまに話すなんて、とても素晴らしい親子関係ができている証拠だと思います。叱ってしまった事も、それほど後悔することではないでしょう。それは、お母さまの人柄からの言葉でしょうし、お子さんも次のステップに移るきっかけになったと思います。
ただ、先ほどもお話ししましたが、子どもの発達過程であると心得ていて応答するか、頭ごなしに叱ってしまうかの違いで、お母さまもお子さんも、気持ちのゆとりがずいぶん変わってくると思います。
:具体的にどのような言葉がけをしたらよいのでしょうか。
:たとえば、
「今日は☆☆ちゃんが、遊びに入れてくれなかった」とお子さんが言った場合、
「あら、☆☆ちゃんが、遊びに入れてくれなかったの?それは残念だったわね~」
「でもいつかきっと、☆☆ちゃんも、あなたと遊びたいって思うと、お母さんは思うわ。だって、あなたは素直で正直で優しい子だもの。誰だってあなたの事を好きになると思うし、一緒に遊びたいと思うわよ」
と、遊びに入れてもらえずに『自分はダメなんだ』『自分は意地悪されたんだ』と感じたお子さんに、自己肯定観を持たせてあげることが、とても重要です。
また反対に、
「私は○○ちゃんと2人で遊びたいから、△△ちゃんを仲間に入れてあげたくない」とお子さんが言った場合、
「あら、そうなの、あなたは○○ちゃんとしっかりお友達になりたかったのね。きっと△△ちゃんには、ちょっと待っててねって言えなかっただけなのね」
「あなたは、いつかきっと、△△ちゃんとも仲良く遊べると-母さんは思うわ」
というように『意地悪』とか『仲間はずれ』という言葉を使わない返答をすることによって、お友達に対しても肯定観をもつことができるでしょう。あるいは、人間関係が時間の経過と共に変わっていく事や、本当に大切な事は、相手の気持ちを思いやる気持ちであることを、気付かせるきっかけになるでしょう。
:お母さまは、女の子は大きくなってもこの様な問題が続くのではと、ご心配されているようですが。
:一対一の深いお付き合いを望むことは、子どもに限らず、誰でも当然あることだと思います。その中で、それぞれの人を認め、円滑な人間関係を築いていかなければなりません。
たくさんのお友達と仲良くできる喜びは、自分一人ではできない大きな目的を持った時に、はじめて体験します。お子さんは、今まさにグループ活動が徐々にできる時期にありますから、お母さまはあまり焦らず、見守って差し上げたらよいと思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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