命の大切さの教え方について悩む母親について ▶4歳男児のお母様より

Q

息子は、自宅でオタマジャクシやカブトムシなどを飼い、よく世話もしているのですが、アリやクモなどは、わざと踏みつぶしたりします。気になって、命の大切さを教えたいと思うのですが、私も、蚊などは殺したりするので、どんなふうに伝えていけばよいでしょうか。

A

:とても真面目なお母さまですね。命の大切さを伝えることは、本当に難しい問題ですから、真剣に悩まれるお気持ちは、よくわかります。
私もどのように伝えたら良いか、大変悩んできました。『命が大切である』と言いながら、私達自身は他の命を奪って生きているという矛盾を、どのように説明したら良いのか、なかなか納得のいく説明ができなかったからです。うっかりすると、子どもの大人への不信につながるかもしれないという恐れは、いつも持っていました。
:自宅では、オタマジャクシやカブトムシなどを飼い、よく世話もしているようです。
:4歳では、身近な小動物に興味や関心を持って、世話をして楽しむということはよくありますが、まだ命について考えるまでには、至っていません。
:アリやクモなどを、わざと踏みつぶしたりするそうです。
:自分が世話をしているオタマジャクシやカブトムシと、アリやクモは違います。オタマジャクシやカブトムシに持っているような興味・関心は、全く無く、ただ気味悪い自分に害をなすかもしれない物に映っているはずです。だから、踏みつぶしたりするのでしょう。ひとくくりに乱暴だとか、心が冷たい子と思ってしまわないほうが良いでしょう。虫などの場合には『興味深い動くおもちゃ』と認識しているのが、普通の発達の姿だと思います。
:お母さまは、命の大切さを教えたいと思っているようです。
:子どもが命の大切さを知るためには、いくつかのステップが必要です。
まず、小動物に興味や関心を持って、食べ物を与えたり、環境を整えたりして一生懸命に世話することで、親しみを感じるようになる。そうしたことを繰り返すうちに、自分の大切な物と思うようになる。それが、何かのきっかけで死んでしまう。そのような悲しみを味わうことで、命というものの真実に気付いていく。このようなステップです。
世話をしながら、話しかけたり、様子を見たり、変化や特徴を友達に自慢したりしながら、親しみを深めていったものが、ある日突然、動かなくなってしまう。おもちゃのように直せば、また使えるというものではないことを思い知らされる、これは大変な経験です。
命の大切さは、こうした悲しみを味わいながら獲得していくものだと思います。
こんな時大人が
「残念だったわね。あんなに大切にしていたのに。けれども、命は失ったら元に戻る事は決してないのよ」
「あなたの命がひとつしかないように、カブトムシの命もアリやクモの命も、鳥や魚や獣の命も、それぞれたったひとつしかないのよ。だからとても大切な物なの」
というような語りかけをすることで、子どもの中に『命が大切だ』という意識が芽生えるきっかけになると思います。
:私も蚊などは殺したりするのですが、と言っていますが。
:この世にある、あらゆる生物は、自分を守るために害をなすものを殺したり、自分が生きるために、他の命を奪わなくてはならない時があるものです。
病気を運ぶ蚊やハエを打つことは、むしろしなければならないことでしょう。天敵と言う言葉があるように、生物はそれぞれ、取ったり取られたりする宿命を持っているものです。猫とネズミ、カエルと蛇、よだかと羽虫というようにです。
けれども、宮沢賢治の童話『よだかの星』で語られているように『どうしてもとらなければならない時の他はいたずらに取ったりしないように』というようなお話をすることで、命についてお子さんと一緒に考える機会になると思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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