どもりのある子どもについて ▶3歳男児の保育者より

Q

私は幼稚園に勤務して2年目の保育者です。現在受け持っている3歳の男の子は、入園当初から、「どもり」がみられました。「おはよう」と言いたい時に「おおおお」と後の言葉がでないままに諦めてしまうことが時々あります。お母さまにもお話しを伺ったところ、入園前よりも、どもり方がひどくなってきているとのことでした。本人は活発なクラスのお友達に負けまいと、一生懸命に話そうとすることで疲れてしまうようです。園ではこれからどのような指導をしていけば良いでしょうか。

A

:お若い先生が、お子さんと真剣に関わっている姿は、素晴らしいですね。どもりは言語障害などではなく、話し言葉がなめらかに出てこない現象で言葉のリズムの問題と言われています。言葉が発達して、話したい欲求が強まっているのに言葉にならないんですね。だいたい3歳前後の発生といわれています。これは一過性のもので第一吃音といいますが、新しい環境への適応に緊張したり、弟や妹が生まれたり、お父さまが単身赴任で遠くに行かれたり、心理的に不安な場合におこることがあります。これらを知っておくと、言葉だけでなく、その子の全人的になものに目を向けられますよね。
:どのように対応していけば良いでしょうか。
:どもりの指導は、原則として、本人に意識化させないということです。どもるお子さんは、感受性が豊かで、知的にも優れている傾向にありますから、先生がどもりに驚いて、心配な表情を向けたり、「ゆっくり言ってごらんなさい」などと聞き返したりすることで、お子さんを刺激して、どもりがさらに進んでしまうことがあります。どもって言葉の始めだけ出てきて後が続かない時には、焦らずに話せるようにゆっくり聞いてあげながら、こちらがちょっとした助け船を出すといいですね。言いたいことが伝えられると、安心して情緒が安定しますから。
:ご相談では、クラスのお友達が活発ということですが。
:3歳のお子さんの発達からいうと、お友達同士で会話が弾んでいるという活発さではないと思います。戸外で体を動かすような活発な行動を言っておられると思いますので、園の先生は、子供たちの中に入り、かけっこしたり、ボール遊びをしたり、砂遊びをしたりして、このお子さんが安心して楽しめるよう関わってほしいと思います。案外そんなことが、言葉の安定の近道になります。
また、周りの子供たちが、どもりに気がついて指摘した時に、先生がどのように対応するかもポイントになりますよね。そんなときは「○○ちゃんは、頭の中に考えていることがいっぱいあるのよ。みんなにたくさんお話ししようと思って上手にできないの。でも、落ち着いて慌てずにお話しすると、素晴らしいことがたくさんでてきますよ」といった言葉がけをすると、本人も自信がつきますし、他の子供たちもそのお子さんへの親しみを持つことにもつながると思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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