忙しさと子どもの泣き声に悩むお母さんについ ▶3歳男児のお母様より

Q

私は仕事をしている母親です。息子は幼稚園から帰宅すると、祖母宅で過ごしています。そんな息子が、最近大泣きすることが多く、困っています。
例えば、私が仕事へ出掛ける時や、帰宅した私がひとりでお風呂に入る時、トイレに入る時ですら、息子はそっくり返って、ひどく泣きわめきます。
「この子がかわいそうだ」と言う祖母の言葉に、何だか責められているような気持ちになるのですが、仕事は今、大変忙しく息子の泣き声に、イライラしてしまいます。どうしたらいいのでしょうか。

A

:仕事にも、子育てにも一生懸命のお母さまなのでしょうね。両立は、本当に大変ですから、お母さまが悩まれるお気持ちは、とてもよく分かります。お子さんが大泣きした時に、どうしようもなくイライラしてしまうことも、手に取るように分かります。
このような話は、よく聞きますよね?
:そうですね。よく聞きますし、私にもそんな経験がありますので、やはりお気持ちはよく分かります。
朝、仕事に出掛ける時に、大泣きして、後ろ髪を引かれるような時もありましたし、子どもが小学校に上がった後にも、情緒が乱れて、シクシク泣かれたことなどがありました。仕事をしているお母さんは、たいていこんな経験をされているのではないかと思います。
:そうですね。けれども子どもにとって、母親とはかけがえのない存在ですから、お母さま自身が中心になって、解決の道を見つけなければならないでしょうね。
お腹がすいたり、さみしかったり、不安だったり、どこか具合が悪かったりする時、先ず、誰よりも求めるのがお母さんです。そんな時にお母さんがそばにいて、自分を助けてくれると子どもは、無意識のうちに信じているものです。それが必ず叶うことで、子どもの情緒が安定します。子どもの情緒の安定は、日常的で具体的な行動を通してもたらされるものです。
たいていのお母さんは、自分が子どもの事を深く愛しているという気持ちを、子どもがわかってくれていると思いがちですが、お母さんの気持ちが上手に伝わらないことも少なくありません。そんな時に、驚くような情緒の不安定さを見せつけられることがあります。
:お母さまと離れる時に、そっくり返って、大泣きをするようです。
:それは、なんとかして、自分の方を見て欲しいというサインです。また、泣くことで子どもが、自分の情緒を安定させようとしていることもあります。
ですから、子どもが大泣きをしている時に「泣くのをやめなさい!」とか「うるさいでしょ!」などと叱っても、あまり効果はないでしょう。
お母さまが、仕事へ出掛ける時には
「お母さんが大好きな○○ちゃん。お母さんはお仕事へ行かなくちゃならないの。ごめんなさいね。でもお母さんは、お仕事をしている時も、いつも○○ちゃんのことを思っているわ。終わったらすぐに帰ってくるから、待っていてね。あなたが待っていてくれるのが、一番のお手伝いになるのよ。ごめんね。お願いね」
と、本気でしっかり抱きしめてあげながら、どんなに大声で泣いていても、お母さまが自分自身にも言い聞かせるようなつもりで、語りかけてあげて下さい。
お子さんが、一緒にお風呂に入りたがったら、お子さんがもうお風呂に入ってしまった後だったとしても
「○○ちゃんも、もう一度、一緒に入る?」
と言って、一緒に入ってしまえば良いのです。一見、手間が掛かって無駄のように思えることですが、お子さんの情緒を安定させる効果があるでしょう。トイレも同じことで、抱っこして入るなどしてみてはいかがでしょうか。
:「祖母の言葉に、何だか責められているような気持ちになる」とのことですが。
:お母さまの、その辛いお気持ちはとてもよくわかります。仕事の忙しさや責任の重さを、おばあちゃまやお子さんに分かってもらうことは、なかなか難しいことですから、説明しても無駄でしょう。
普段、折りあるごとにお子さんに対して
「世界で一番大切なのはあなた」
「お母さんもあなたと一緒にいられないのが辛くて仕方がないの」
「でもお母さんはとっても大切なお仕事をしているの。あなたがお母さんのお仕事の一番のお手伝いさんよ。寂しいけれど我慢してね」
という自分の素直な気持ちを、繰り返し伝えていくことです。抱きしめたり、手をつないだり、しっかり目を見たりして、心で向き合おうとすることに努力なさっていると、だんだん気持ちが通じて、お子さんの気持ちも安定していくと思います。
仕事をお持ちになっているお母さまは、誰でも通る道です。お子さんをかわいそうと思い過ぎず、これもお子さんの成長のためだと考えられて、あまりご自分を責めず正直な気持ちで、お子さんに向き合っていかれると、きっとお互いにとって、明るい日がやってくると思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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