ひとりっ子のひどい甘えについて ▶5歳男児のお母様より

Q

年長組に通う息子は、ひとりっ子で甘えん坊なところがあります。甘やかし過ぎたのかもしれませんが、私が関われないと、すぐに泣いたりすねたりします。例えば、私が料理をしている時に「ジュースを飲みたい」と言うので「少し待ってて」と答えると、すねて機嫌が悪くなります。また「公園に行きたい」と言うので「パパと行って来て」と答えると、泣いてぐずり始めます。
5歳なのに、この甘えはひどいと思うのですが、主人からは「お前が甘やかしたからいけないんだ!」と言われるし、どうしたらいいのかわかりません。これから、息子にはどのように接していけばよいのでしょうか。

A

:『掌中の珠』という言葉がありますが、お母さまは、お子さんを大変に可愛がり、何もかも自分でなければと思って、育てていらっしゃったようですね。今回のご相談は、お子さんの心身の成長と、アンバランスの姿だと思います。
: どういうことでしょうか。
:子どもは成長と共に、いろいろなことが自分でできるようになります。自分で何かできた時の、満足感や自信、また、失敗した時に感じる、次へのチャレンジの心は、成長の原動力となって、子どもを内から安定させるものです。けれど、何でもして下さるお母さまの手厚い手があるために、このお子さんは、受け身でいる事が当たり前になってしまったのでしょう。それも、幼いうちには、心地良かったのでしょうが、成長と共にほとんどの子どもが体験する、自発的な、あるいは自由な快感を味わうことが少なくて、求めるものと与えられるもののズレを、なんとなく感じているのでしょう。
イライラがたまり、すねたり、甘えるといった反抗の姿となって出てきているのだと思います。
: どうしたらよいでしょうか。
:例えば「ジュースを飲みたい」とお子さんが言ったら「少し待っていて」とは言わないで 「どうぞ、自分で冷蔵庫から出して召し上がれ。でも夕ご飯の前だから、少しにしてね」と答えて、お母さまは料理を続けていれば良いと思います。
5歳児が、自分でジュースを冷蔵庫から出して飲む事くらい、きっとできるでしょうから。その時にもし、すねてご機嫌が悪くなっても、気にせず
「自分でできる事は、自分でしてね」と言うことがポイントです。そんなことを、何度か続けていると、きっと自分でするようになるでしょう。
: 「公園に行きたい」のような、子どもひとりではできないような要求には、どう答えたらよいでしょうか。
:お子さんは、退屈で遊びたいためでしょうから、何をしたいのか聞いてあげて、子どもがやりたい事を自分の言葉で表現できるような聞き出し方をすることです。行くか行かないかの答えよりも
「あら、公園に行きたいの?○○君は、かけっこが速いものね!ブランコも上手だし。ぜひ、パパに見て頂きなさい」というような言葉がけも良いですね。
: 泣いてぐずることもあるそうですが。
:子どもが、泣いたり、ぐずったりする時は、たいてい自分の要求が理解されない時ですから、それを察するのが大切です。このお子さんのように、お母さんが一緒でなければ、安心できない、なんとなく不安だという状態を泣く事によって、要求を通そうとしている場合、自分でできることを、できるだけ自分でさせ、お母さんの手助けがなくてもできるんだということを、分からせる工夫が大切ですね。これからは思い切って「自分で好きにやってごらんなさい」といった関わりを心掛けると、お子さんにも自信がつき、世界を広げていくでしょう。子どもらしい失敗も、たくさん経験させ、しっかり見守りながら、お子さんのできないことだけを助けることにしていけば、きっとお子さんは、自主性や積極性が育ち、たくましくなると思います。泣いてぐずっても、お母さまが凛として、そのような態度を貫いていけば、数回の相互の我慢で乗り越えることができます。
: ご主人からは「お前が甘やかしたからいけないんだ」といわれるそうですが。
:ご主人には、甘やかしているように見えるのでしょう。それは、そのとおりでしょうが、一方でその姿は、お子さんの、お母さまへの愛着が育っている証拠ですから、ご自分をあまり責めることはないでしょう。今の関係を土台にして、プラスに変えることはいくらでもできます。
「パパ、見てあげて。○○はこんなことできたのよ!」なんてお父さまとお子さんの関わりを深める事も大事だと思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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