「ママに言わないで」と言う子どもについて ▶5歳女児のお母様より

Q

5歳の誕生日を迎えたばかりの娘についての相談です。娘は普段、私の仕事の都合のため、よく祖父母宅で過ごしています。そんな時に、「ママには言わないで」と祖父母にお願いすることが、度々あるようなのです。
また、お友達に「いけないんだぁ」と言われた娘が「ママには言わないで」と言っているのを、実際に聞いてしまい、ショックを受けています。そろそろ善悪もわかる年齢だからと、私がよく叱るせいだと思うのですが、娘にどう接していったらいいのでしょうか。

A

:一生懸命にお子さんを育てていらっしゃるお母さまですね。母親としての責任感と緊張がお子さんに伝わって、お子さんからは誰よりも怖いと思われているのでしょうね。
: 祖父母宅で過ごすことが多いようです。
:お母さまが働いていて、おじいさま・おばあさまにお子さんを預けていらっしゃる場合には、特にお母さまも、お子さんの細かな様子が気になり、しつけのために叱ることがよくあるのかもしれませんね。
: お母さまは「ママには言わないで」という、お子さんの言葉に傷ついているようですが。
:それはやはり傷つきますよね。自分がむやみに厳しく、怖いお母さんであると、レッテルを張られたような気持ちになってしまいますよね。けれども、この言葉は、お子さんの精神的な緊張の表れであると同時に『お母さんに良い子と思われたい』という、切ないほどの願望の表れでもあるのです。
: どのように接していったらいいのでしょうか。
:おそらくお子さんから見ると、お母さまはとても素敵なモデルに映っているのだと思います。おじいさま・おばあさまに迷惑をかけないで、お母さんに褒められることが、このお子さんにとって最も重要な課題になっているのでしょう。
ただ、現状のままですと、お子さん自身が、自律的に『何が良くて何が悪いか』を理解しないままに『お母さんに叱られるから、やる・やらない』『お母さんに怒られなければ良い』というように、物事を他律的に捉えたままになってしまいます。
お母さまには、子どもの望ましい生活習慣をしつけると同時に、どんな時も心の安らぎをもたらすという役割があります。例えば、おじいさま・おばあさまに迷惑をかけたとしても、代わりに謝って、寝る時にそっと励ましてあげるというような心づかいです。
道徳的な罪悪、例えば嘘をつくとか、人に迷惑をかけるようなことでなければ、大目に見ることも大切です。確かに、望ましい生活習慣は大事なことですが、たくさんの失敗を繰り返して見に付けていくものです。あまり細かな行動に、お母さまが敏感にならずに、少しのでたらめや間違いにこだわらないことは、とても重要なことです。
失敗の受容が、子どもに、何が良いことで何が望ましくないかを、自分自身で気付かせるきっかけになります。お母さんの期待に応える事よりも、受容してくれたお母さんを慕わしく思う心の育ちが「ママには言わないで」という言葉を消していくでしょう。
帰宅した際に、お子さんが靴を揃えていなかったら
「あらあら、元気に帰って来たのね」と言いながら、お母さまが靴を揃えてあげる。
外出先であった人に、挨拶ができない時にも
「あら、恥ずかしくなっちゃったの?でも目で『こんにちは』って、挨拶してるのよね」
と叱らないで、言葉を添えてあげるというようなことを繰り返していくと、意外と自然に、望ましい生活習慣が身についていくものです。
子どもの適応力を信じて、伸びやかに、大らかにお子さんを見てあげることがいいでしょう。きっと、お母さまが変わることで、緊張が和らいで自律的なお子さんに育っていくと思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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