被害者意識の強い子どもについて ▶5歳男児のお母様より

Q

もうすぐ6歳で、小学一年生になる息子です。今息子に付いて、悩んでいるのは、家に帰ってくると「A君がいじめる」「B君が仲間に入れてくれない」などと言い始めたことです。驚いて、園の先生に相談したのですが、お友達とトラブルはあるものの、お互いさまのようなもので、特に息子が、いじめられているとか、ひとりで寂しくしているわけではないとのことでした。
あまりに毎日のように訴えるので、先日は「そんなウソをついて!」と息子を怒ってしまいました。被害者意識が強すぎるのでしょうか?トラブルを上手に乗り越え、お友達と仲良く過ごして欲しいのですが、どう対応したら良いのでしょうか。

A

:お子さんが、このようなことを言う時には、何かしら原因があって情緒的に満たされていないことが多くあります。お母さんに甘えたい、自分にもっと関わってもらいたいと思って、こんな刺激的なことを言ったのだと思います。
小学校入学を間近に控えたお子さんですから、なんとなく心を乱すことはよくあることですよね?
: そうですね。就学時健診を終えた子ども達の中には、嬉しそうに、その様子を話してくれるお子さんもいますが、なんとなく怒りっぽかったり、声を荒げたり、ちょっとしたことですねたりするお子さんもよく見かけます。
:そうですね。就学前というのは、幼児教育の終着点ですから、次の課題が見えだしてきて、自分と周囲の子ども達を比べたりして、何とも不安になるのでしょうね。
: 「A君がいじめる」「B君が仲間に入れてくれない」などと言い始めたとのことですが。
:子どもが、自分の不安を親に話す時、どんな言い方をすることができるのかを、ここで少し想像していただきたいのです。おそらく、いじめられたとか、仲間はずれにされたとか、自分が被害者であるということを言わないと、真剣に味方になってもらえないと思ったのでしょうね。
: お母さまは、園の先生に相談したということですが。
:先生にご相談したというのは、やはり正解だったと思います。園での実態を知ることができたでしょうし、先生にもお子さんの不安な気持ちを理解していただけたでしょう。ただ、それだけで、お子さんの情緒が安定するというものでもないでしょうね。
: 毎日のように訴えるので、先日は「そんなウソをついて!」とお子さんを怒ってしまったそうですが。
:お子さんの言葉をそのままの意味に受け取らず、本当は何を言いたいのか、何が不安なのかを、お子さんと一緒に考えてあげることが大切です。お母さまが、被害者意識が強いと断定せずに、お子さんが『なんとなく不安である思いを受け止めて欲しい』『自分の立場を分かって欲しい』と思いながら、それを上手く表現できないのだと理解してあげることです。そうわかってあげることで、お母さまのお気持ちも軽くなると思います。
: トラブルを上手に乗り越え、お友達と仲良く過ごして欲しい、とのことですが。
:お子さんの感じている不安は感情であり、理屈ではありません。自分に自信がなくて、不安な時に、お友達と仲良くすることはとても難しいことです。
不安感を取り除くために、どんなにへたくそな言い方でも、理屈に合わない話でも、それを聞きながら、気持ちを落ち着かせてあげることです。 例えば、「A君がいじめる」と言ったら
「それは、大変だったわね。悲しかったでしょう」とまず受け止め
「それであなたはどうしたの?」と聞いて、次に
「仲よくするためには、どうしたらいいのかな?○○君はおりこうだから、考えて見て」と続けて話しあいながら、自分の立場を理解し、安定してくるように努めるといいでしょう。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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