クールすぎる子どもについて ▶5歳男児のお母様より

Q

年中クラスに通う息子なのですが、クール過ぎることが気になっています。
5歳くらいだと、人形同士が会話することを楽しんだり、サンタクロースやヒーロー物にも夢中になる年頃かと思うのですが「人形が話せるわけないよ」「サンタさんなんて、本当はいないし」「怪獣なんて出てこないよ、あれはウソっこだもん」などと言います。
なんだか冷めていて、大丈夫かなと心配になってしまいます。クリスマスも近いので、息子にもそういったものを喜んで欲しいと考えています。何か良い方法がありましたら教えて下さい。

A

:賢いお子さんなのですね。幼い子どもが、皆サンタクロースを信じているとは限りません。いろいろなタイプの子どもがいるものです。
今回のようなご質問には、お子さんの発達の問題と、性格の問題のふたつの視点があるようですね。このふたつを意識して対応していけば、素晴らしい成長が期待できると思います。
: お子さんの発達の問題と性格の問題とは、どういったことでしょうか。
:まず、発達という点から見ると、事実をきちんと捉える観察力とか、認識力、つまり、知的発達がしっかりしているということです。また、そうした発達と共に、物事をあまり情感的にみたりしない、子どもながらに現実を見据えて考える理知的な性格のお子さんということです。
子どもはみんなファンタジーの世界で遊ぶことができて、おとぎ話を好きだと思っている大人を、冷めた目で見る子どもは、案外沢山います。
: では、実際に「人形が話せるわけないよ」と言われたらどう答えたらいいでしょうか。
:「そうよね。あなたの言うとおり、人形が話せるわけないわ。でも、お話の中の人形は、お話を作った人の代わりに話しているのよ。お話を作った人は、子ども達に何か言いたいことを持っているものよ。だから、人形でも、たいてい本当の事や、あなたにもわかるような気持ちを話しているでしょう?よく聞いてごらんなさい」などとお答えになったらよいと思います。
: 「サンタさんなんていないし」と言われたらどうでしょうか。
:「目に見える、煙突から入ってくるサンタさんは、本当はいないかもしれないけれど、あなたがもっと大きくなれば、サンタさんの心を持った人がたくさんいることがわかるわよ。昔からずっと、子ども達は、良い子にしていればサンタさんが、きっとプレゼントを届けてくれると信じてきたのよ。大人はその子ども達の心を大切にして、自分がサンタさんになろうとしているのよ。姿が見えないからといって、それは、サンタさんがいないということになるのかな?」といったような言葉かけをすると良いでしょう。賢いお子さんなら、無形な物の価値に気付くきっかけとなると思います。こんな会話の後に、クリスマスを楽しむことができたら、それこそ意義深い日を過ごすことになるでしょう。
: 「怪獣なんて出てこないよ、あれはウソっこだもん」と言われたらどうでしょうか。
:「そうよね、あんな恐ろしい怪獣がいたら困るわよね。でも何を言っても分からない、わがままで、めちゃくちゃな事をする子どもだっているじゃない。そんな子は、大人からみたら怪獣に見えちゃう時だってあるのよ」
「あのお話はね、誰でもどうすることもできないほど大変なもの、目に見えないけれど人間を滅ぼしてしまうような恐ろしいもの、バイ菌や人間自身の中にある、欲張りやイジワルの心を怪獣の姿にして、それと戦う物語にしたのよ。だとすると、本当にこのお話を、ウソっこだって言えるのかしら」といった対応をしていけば良いと思います。
知的なお子さんですので、お子さんの発言を否定しないで、お母さまが受け止めながら対応していくことで、賢さと豊かさの両方が、さらに育っていくと思います。
難しい話のようですが、お母さまが本気で話したら、お子さんの精神的な視野の広がりを得るきっかけになると思います。

(ラジオ番組「楽しい子育て」より)
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